絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
独立して5年になる夕貴は、既に酸いも甘いも経験した立派な経営者であり、大人であった。ホスト時代から自分の店を持つのが夢だったが、それがうまく叶い、今に至る。家庭も持ち、全てが順調に見える傍ら、時々思い出すことがある。
それが、香月のことだった。ずっと昔に、一度だけ、好きだと告白したことがある。結局はうまくはぐらかされて、今は良い友達の一人になりすましているが。ただ一つ、わがままな願いが叶うのならば、彼女が誰よりも幸せになってほしい。
遠くから見守るだけでいいから、彼女がずっとずっと幸せになってほしい。
今日も売り上げが盛況な店でのカウンターで的確な指示を出す夕貴は、顔をあげた瞬間、自らの気持ちが口に出てはいなかったかと、かなり驚いた。
「やっほ」
「おおーーー!! びっくりしたあ」
って、隣にいる長身の男はまさか……
「なんでそんなビックリ(笑)。紹介します、えーと……」
「巽です」
言いながら2人はカウンター席に腰掛けた。夕貴は驚いた表情を一瞬で営業スマイルに変えた。知る人ぞ知る男、これが香月の男か!! なるほど納得、これなら全てを任せられる相手だ。
「こんばんは、夕貴です」
夕貴は安心した表情で話しかけた。
「いいのよ、別にそんな営業スマイルじゃなくても、私はプライベートなつもりで来てるから」
「ってね、俺は仕事してんの」
「まあそうだけど」
「何にします?」
「バーボンを」
「んっとお、じゃ、私も」
「飲めるの?」
夕貴は恐る恐る聞いた。
「いや、あんまり好きじゃないけど、ここは一つなんとなく、見栄で」
「どんな見栄だよ(笑)」
だが夕貴はきちんと注文に答えて、2人同じ物を並べた。
「香月さんとは幼馴染みたいなものなんです」
巽が手持無沙汰にならないよう、話しかけておく。
それが、香月のことだった。ずっと昔に、一度だけ、好きだと告白したことがある。結局はうまくはぐらかされて、今は良い友達の一人になりすましているが。ただ一つ、わがままな願いが叶うのならば、彼女が誰よりも幸せになってほしい。
遠くから見守るだけでいいから、彼女がずっとずっと幸せになってほしい。
今日も売り上げが盛況な店でのカウンターで的確な指示を出す夕貴は、顔をあげた瞬間、自らの気持ちが口に出てはいなかったかと、かなり驚いた。
「やっほ」
「おおーーー!! びっくりしたあ」
って、隣にいる長身の男はまさか……
「なんでそんなビックリ(笑)。紹介します、えーと……」
「巽です」
言いながら2人はカウンター席に腰掛けた。夕貴は驚いた表情を一瞬で営業スマイルに変えた。知る人ぞ知る男、これが香月の男か!! なるほど納得、これなら全てを任せられる相手だ。
「こんばんは、夕貴です」
夕貴は安心した表情で話しかけた。
「いいのよ、別にそんな営業スマイルじゃなくても、私はプライベートなつもりで来てるから」
「ってね、俺は仕事してんの」
「まあそうだけど」
「何にします?」
「バーボンを」
「んっとお、じゃ、私も」
「飲めるの?」
夕貴は恐る恐る聞いた。
「いや、あんまり好きじゃないけど、ここは一つなんとなく、見栄で」
「どんな見栄だよ(笑)」
だが夕貴はきちんと注文に答えて、2人同じ物を並べた。
「香月さんとは幼馴染みたいなものなんです」
巽が手持無沙汰にならないよう、話しかけておく。