絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
「やっぱりねー、なんか歯切れ悪い、さっきから」
「まあ……だって……近くだし……。噂とか聞いててさ……それに、一回すれ違ったことあったんだぜ」
「え゛!? どこで!? 何で声かけてくれないの!?」
「いやだって、携帯も繋がらなくなってるし……でまあ最初はびっくりしたけど、なんか理由があんのかもって思って、主治医に聞いたわけ」
「えー!!! 夕ちゃんが自分から連絡とったの!?」
「携帯知らないから病院にかけたよ。んで待ち合わせして」
「信じらんない、どうしちゃったの(笑)」
「お前のせいだろ! あいつも驚いてたよ、でも、相談して、まあ、元気ならむやみに近づかない方がいいんじゃないかって。自分で携帯も変えて、仕事も変えたんならなんか理由があるんだろうし、また、連絡とりたくなったらとってくるだろうって」
「……あの人が?」
「まあそうだな、面倒くさがりなんだよ、結局あいつは」
「そういわれれば、そうとれるのよねえ」
「そうなんだよ、実際(笑)。でもまあ俺は同業だから、知らん顔しててもよく分かるしな、本当にダメそうだったら声かけようとは思ってたけど」
「……知らない間に私、皆に知られてたんだね……」
「勝手に携帯変えるから心配すんだよ。せめて電話がつながればなんともないのに」
「そうだったのか……」
 香月は次に頼んだノンアルコールジュースを一口飲んだ。
「店では飲んでたの? 酒」
「うん、でもまずいからあんまり。それが嫌だったなあ。ルームシェアの人がたまーに来てくれてね。その時は決まってソフトドリンクだった」
「ああ、何だっけ? 高いヘネシー飲んで、まずいって言って、一回阿佐子が怒ったよな、もうこの子にはお酒出さないでって(笑)」
「えー、そんなこと、あった?」
「あった、あった(笑)。懐かしい……」
「そだね……」
「まあ、どっちでもいいとは思うけど、医者にも一応言っといた方がいいよ。俺もう病院かけるの嫌だから」
「あ……うん、けど私も、携帯わかんないや。私も病院かけなきゃ。桜美院いるんでしょ?」
「ああ、多分。ロンドンがどうとか言ってたけど、忘れたな。多分いると思う」
「皆で一回ロンドン行きたいね」
「この前行ったじゃん(笑)」
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