狼彼氏に甘いキスを


 夢だったんだ。



 少なくとも、豊岡くんは今、あたしの横にいる。



 握りしめられた手を握り返しながら、豊岡くんの首に抱きつく。


「!?」

 豊岡くんが驚いたのを感じる。
 あたしは囁いた。



「少しでいいから、こうさせて…」



 怖いの。

 豊岡くんがあたしの前から消えることが。


 だから、ちょっとだけ、こうさせて。



 いつの間にか、腰に腕が回っていた。



 そのまま引き寄せられる。


 綺麗な顔があたしを見る。



「どんな夢見たの?」



 柔らかい声に喋ってしまう。
 迷惑かもしれないのに。

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