狼彼氏に甘いキスを


「…何か用か?」

寝ていたのを起こされたのと、嫌な相手のせいで俺の機嫌は絶不調。


『んー?お誘いに決まってるでしょ。どうせ新しい彼女とシてないんでしょ?』


何でわかるんだ、この野郎は。


『あたしもねぇ、今の彼氏は微妙なの。シない?』


軽く溜め息。

つまり、身体だけの付き合いをしよう、と。


「む、り」


俺の答えに電話越しに息を飲む音がした。

それを無視して言う。



「俺は夏織チャンじゃないと嫌だからな」



菜月の声も聞かず、電話を切る。



抱き締めるのも、
キスをするのも、
触れるのも、

夏織チャンじゃないと嫌なんだ。


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