体で伝える愛言葉
クスリをやめてからの琴弥は、しばらく禁断症状が続いた。


目の下のクマは消えず、食べてもすぐに吐き、幻覚や幻聴を繰り返した。


「いやぁ~虫がいる~。」


「大丈夫だ。何もない。」


慎二はそんな琴弥を、少し悲しそうに見つめる。


自分を責めているんだろう。


慎二は、琴弥が心配だからと、自分の家に住まわせることにした。


「クスリ…クスリちょうだい」

「琴弥ダメだよ!!」


「気分悪い…吐きけがする。」

「横になってろ。」


地面に落ちている誇りを口に入れたり、外に連れ出せば、小石を口に入れたりと琴弥の奇行は続いた。


突然笑い出したり、かと思えば泣き出したり、毎日が戦争だった。


暴れだす琴弥を三人がかりで押さえつけたこともある。


「ごめんね…。」


素に戻った琴弥は、必ずみんなに謝る。


「気にすんな。最初は辛いかもしれないけど、一緒に乗り越えよう。」


琴弥を励ますのは、いつも慎二の役目だ。


「お前の辛さ良くわかるぜ。俺もクスリが抜けたときはヤバかったから。けど1ヶ月耐えたら幻覚も幻聴も、やりてぇって思いもなくなる。」


廉斗の口から、意外な真実が語られた。


「ちょっとまって、やってたの?」


「昔な。花梨くらいの頃。」


「毎日ラリってたぜ。」


「けどさ、母さんが泣いてんの見て、横で親父が慰めてんの見て、俺何やってんだろうって目が覚めたんだよ。それでやめた。そんときも、慎二が全力でフォローしてくれたっけ。」


「なんで俺の周りってクスリやってたやつだらけなんだろ。」

こうなると、自然と慎二の目は私を見る。


「やってないから!!断じてやってない。神に誓ってやってない。」


「花梨はやらないよ。そういうの興味ないもん。」


琴弥のフォローのおかげで私の疑い(?)は晴れた。


廉斗の読み通り、琴弥は1ヶ月もすると禁断症状が抜けた。


クスリを欲しがることもなくなった。
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