体で伝える愛言葉
一旦家に帰ってから、次の日病院へ行った。


毎日顔を出そう。


廉斗を元気づけるために、廉斗の好きなものをたくさん作って、たくさん持って。


私がナースステーションに顔を出すと、看護士さんが、険しい顔で近寄ってきた。


「花梨ちゃん…今は行かない方がいいかも。」


「どうしたんですか?」


「昨日の夜から、ずっと叫んでる。」


私は急いで廉斗の部屋に向かった。


「うぅ~ああ゛~!!わかんねぇよ!!なにも聞こえねぇ!!何でだよ!!何でなんだよ。」


叫びすぎて、声がかれている。


廊下にいてもよくわかった。


ものが倒れる音がして、私は急いで扉を開けた。


「廉斗!!」


廉斗が暴れてる。


私は廉斗に抱きついて止めた。


けどすぐに振り払われる。


「いたっ!!」


地面に思い切りダイブしてしまった。


それでも、諦めずにしがみつく。


そのたびにはね飛ばされて、3ヶ月も眠っていたのに、全然力が落ちてない。


「やめて廉斗!!」


聞こえないはずなのに、私は叫んでいた。

けどやっぱり廉斗はとまらない。


「ああ゛~!!」


雄叫びをあげながら暴れる。


テーブルを蹴り飛ばし、ベットを殴る。


私は、廉斗にはね飛ばされた衝撃で、壁に背中を打ち付けた。


息ができない。


廉斗はちょうど消灯台を挟んだ向こう側にいる。


うずくまっている私は、それで隠れて見えていない。


蓮斗は、私がいることに気づいていない。

「全部壊れちまえ~!!」


廉斗は、消灯台を倒した。


消灯台がゆっくりと、私の方へ向かってくる。


体の痛さで動けない。


「キャー!!」


私は下敷きになった。


消灯台に足を挟まれて身動きがとれない。

痛い。

痛い。


助けて廉斗。


廉斗が壊れて、私の知っている廉斗じゃなくなった。


痛みと恐怖で涙が流れる。


医者とナースが入ってきて廉斗を取り押さえた。


ナースの1人が廉斗の頬を思い切り叩いた。


「う、し、ろ、を、み、な、さ、い、」


ゆっくりと伝える。


それは、私に行かない方がいいと言ったあの看護士さんだった。


廉斗は振り返り驚いた。


消灯台に足を挟まれ、怯えている私がいる。


「あ…ごめ…かり…ん。」


廉斗は私を助けようとする。


「いやっ!!」


思わず払いのけてしまった。
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