体で伝える愛言葉
いつものように、琴弥と買い物を済ませてから、喫茶店で暇つぶししていた。


ふと隣を見ると、女の人が何かしている。


手をしきりに動かして、向かいの男の人も、同じように手を動かして。


「何やってんだろあれ?」


「手話じゃん。廉斗も手話が使えたら、引け目を感じなくて良いかもしれないね。」

琴弥が言い終わる前に、私は立ち上がっていた。


「あっちょっと花梨!!」


私は、その男女の前に立った。


「何ですか?」


男性が怪訝な顔で私をみる。


「あのっそれ…。」


私は二人の手元を指差した。


「コレが何か?」


「私にも教えてくれませんか?手話。」


女性が男性に何かジェスチャーしている。男性か手話で答える。


「いいですよ。」


彼がほほえんで答えてくれた。


私たちは、日曜日に約束をして、番号を交換した。


なんと彼らは、廉斗と同い年の、大学生だった。


彼は、手話サークルにボランティアで手話を教えにきていた彼女に一目惚れ、告白して付き合うことになったそうだ。
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