体で伝える愛言葉
帰ってきた廉斗に早速今日のことを話した。


「い゛ら゛な゛い゛。」


予想通りの答えだった。


「お゛れはまだ話せる。口を見れば、言葉もわある。手話はい゛らない。」


「廉斗逃げないで。手話があれば、あなたが引け目を感じて、引きこもらなくてもよくなる。紙とペンを持ち歩かなくても、いつでもどこでも会話ができる。」


廉斗の目を見てゆっくり話す。


「お゛れ゛は、ま゛だきこえ゛る゛。」


廉斗私の横をすり抜けようとする。


私は再び廉斗の前に立ちはだかり、今日本屋さんで買った手話の本を見ながら組み合わせた、手話をする。


廉斗が拒否することくらいわかってた。


だから私はこの手話を必死に練習したんだ。


“手話にはね、人を傷つける言葉がないんだよ。だから私は手話が好き。”


そう言って廉斗から離れた。


「な゛んらよ。な゛んていたんらよ?」


廉斗、私知ってるんだよ。あなたが気になったら調べずには、いられない性格だって。


私は廉斗にメールを送ってみた。


「アメリカ人は英語を話す。
中国人は中国語を話す。
日本人は日本語を話す。
それぞれの国に、それぞれの言葉があるように、耳の聞こえない人に、耳の聞こえない人の言葉があってもいいと思う。」


廉斗から返事は来なかった。


廉斗はその日部屋に入ってこずに、リビングのソファーの上で寝ていた。


テーブルの上には、私が買ってきた手話の本が置いてあった。
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