恋の花咲く事もある。
密命
「あれは……遡れば昨年の秋口の頃になります」
親書を元通りに巻き直し、エルダナに返した後。
ラゼリードは俯き、両手を胸の前で握り締めながら口を開いた。手の中には脱いだままの手袋。
伏せた睫毛が微かに震えている。まるで話したくない事を口にするかの様に。
「姫。お話の前に手袋をお着け下さい。腕が冷えてしまう」
エルダナが有無を言わさぬ調子でラゼリードの手から手袋を奪った。彼女の腕に手袋を填め、一つ一つ留め金を止めていく。夏場なので冷えるという程ではないが、自分の手では着脱困難な長手袋の為、ラゼリードは大人しくエルダナに任せた。彼は外す時程ではないが、それでも手際良く手袋を付けた。
「お気遣い、痛み入ります。……続けても宜しいでしょうか」
エルダナが頷いた。
「昨年秋、カテュリアの先代守護者フィローリが寿命で倒れ、ほんの僅かな期間床に伏せられたのち帰らぬひととなられました。その際、フィローリが自分の魔力を糧にして育てておりましたカティが……我がカテュリアの特産物、薬草カティの多くが枯れてしまったのです」
「存じております。乾燥花の在庫がある為、全体的な輸入量はいつもと変わりませんだが、生花の輸入量が激減すると……この春、セオドラ殿自ら謝罪に来られましたので」
エルダナの言葉に、顔を上げたラゼリードが色違いの瞳を潤ませた。その肩が震えている。涙が一粒、赤い左の瞳からポロリとこぼれ落ちた。それが血色をしている様に見えて、エルダナは一瞬どきりとする。
「わたくしの所為です。わたくしが引き継いだ守護の力を制御出来ておりましたら、カティは……!」
溜めていたものを吐く様な彼女の叫びは、思いのほか大きな声だったのだろう。エルダナが唇の前でシッ、と人差し指を立てた。
彼が顔をちらりと硝子扉の方へ向ける。ラゼリードもつられてそちらを見た。
主役のラゼリードも、主催のエルダナもその場には居ないのだが、夜会はまだ続いているらしい。
輪になり踊る男女や、そこここで話をする者達、忙しく立ち働く侍女達の姿、おびただしい数の蝋燭で眩く輝く大広間が、バルコニーからは切り取られた一つの絵の様に見えた。
「それで……引き継いだとは?」
エルダナが顔の向きをラゼリードの方に戻し、不審気に眉を顰める。
「それはおかしい。我々精霊は確かに、これぞと決めた人や土地を護る『守護』の魔法を持つ者もいますが、それは一代限りのもので引き継げるものではない。貴女はご自分でカテュリアの守護を誓われたのではありませんか? ですから守護になられたばかりで、まだ力が安定されていないのでは?」
心当たりがあるのか、ラゼリードがハッと息を飲んだ。だが、その表情は見る間にますます暗く沈んだ。
「確かに……。ですが確かに引き継いだとも言えるのです。フィローリはわたくしに、カティの育成方法をお教え下さり、後を任せると……。何より、わたくしの力はフィローリから」
早口で言い募るラゼリードをエルダナが手で制する。
「その辺りのお話をお伺いするのは敢えて止めておきましょう。私の立ち入るべき領域ではなさそうだ。……しかし解せない。貴女方カテュリアでの『守護』の意味合いは、我らの魔法の『守護』とはどうも違うようだ」
エルダナはふと、広間の方へと顔を向けた。硝子扉の向こうで侍女が湯気の立つゴブレットと、氷の入った茶のグラスをそれぞれ二つずつ盆に載せて立っていた。
エルダナは侍女を手招いた。硝子扉を開けて、侍女がバルコニーに歩み出てくる。甘い柑橘類の香りが漂った。
礼を述べながら飲み物を──エルダナはグラスを、ラゼリードはゴブレットを──受け取り、侍女を下がらせる。
ラゼリードがゴブレットに口を付ける。中身は柑橘の香りを付けた温茶の様だ。
ラゼリードの青ざめた顔に少し生気が戻った。
「わたくし達の言う守護とは、カテュリア王家の者を護る事、そして広大なカテュリアの土地と民を戦争や災害から護る事。しかし、戦の無い今、最も重要な役目はカティの生産です」
ラゼリードはゴブレットの中身に視線を落とした。揺れる茶の水面に映っているのは、いかにも情けない表情の彼女。自嘲気味に彼女は笑った。
「カティの苗床になっている山に魔力を分け与えて生育を補助し、猛烈な毒素を持つ為に自然受粉しか出来ないカティの受粉を風で助ける事。そして現地の住民にカティの毒花粉が広まらぬ様に護ること。それがカテュリアの『守護』の任務です。大半が植物学者でいらしたフィローリの研究成果の引き継ぎなのです」
「成程。本来は数多く生えないカティを大量生産するからくりは伝え聞いておりましたが、『守護』がその様な事柄だったとは。それで、守護交代の折りにカティが枯れた事により……?」
エルダナが先を促す。ラゼリードは再び茶に口を付け、唇を湿すと表情を引き締めた。背筋を伸ばす。
「カテュリアの守り神の逝去、守護交代、カティの激減と混乱の相次ぐ中を狙い、カテュリアの有力貴族を中心に、背信者が現れました。そ奴らは、事もあろうに数少ないカティの生花の密輸を行ったのです」
エルダナの表情が陰った。その中で、ざくろ石の様な赤い瞳だけが強い光を放って煌めいている。
それは、知性の煌めき。何もかも察したらしいエルダナが重々しく頷いた。
「ようやく話が繋がりました。密輸出の先はルクラァンですね?そして貴女はそれを追っている。有力貴族が関わっていると、今仰った。ともなれば貴族に縄を掛けられるのは王族のみ。カテュリアで事が露見した際、貴女が関わったんだ。だから貴女がルクラァンに訪れた。……そうですね? 国政代替わりの挨拶外遊はルクラァンを訪れる為の建前だ」
ラゼリードは頷いた。最早その顔に先程までの憂いは無い。ラゼリードは王族らしい毅然とした顔付きをしていた。
「はい。その通りでございます。討伐にはわたくし自ら志願しました。……今年の春に事が発覚し、首謀者は全員捕縛、尋問しました。現在処分待ちの状態です。ですが、ルクラァン側でカティを受け取った者達の事は首謀者共も知らないらしく正体不明のまま、そして密輸されたカティも行方知れずなのです」
ラゼリードは一息吐くと、今度は一気にまくし立てた。
「父の親書の内容は、こうです。『死の運び手、救いの手を伸べる女神、焼け付く吐息の主』これはカティとその毒性、薬効を差します。『存在を許されぬ紫の悪夢』は、紫色の花を咲かせるカティを用いた謀り事。
そして『蝶々』は、このわたくし」
ラゼリードは左手を胸元に置いた。
白いドレスの胸の上、雪の様に白い肌に羽根を広げる黒い蝶々。
「わたくしが父から受けた密命は、この10日間のルクラァン滞在期間中に、ルクラァン側の首謀者を突き止め、捕縛、場合によっては処刑する事。そしてカティが無事である場合はそれの奪還及び、ルクラァンへの納品です」
エルダナが驚いた表情を浮かべて片眉を上げる。彼は姿勢を崩してバルコニーの手摺りに寄りかかった。
「10日。それはまた無理な注文ですね。『どうぞ蝶々に自由を与え賜え』……それで私に片棒を担げと」
ラゼリードが弱りきった様に眉根を寄せた。指を組み、背の高いエルダナを見上げて懇願する。
「わたくしが外交の合間にこっそりと王宮から出て街を探索し、事の次第によっては市街地で武器を使用する事だけでも黙認して頂きたいのです。今の機を逃せば、わたくし自らが討伐する事は叶いません。わたくしは、フィローリが残した物を悪用された事が許せないのです。どうしてもわたくしの手で、その謀り事を潰したいのです。……守護ラゼリードの名に掛けて。どうか、お願い致します」
焦らす様にエルダナがグラスに口を付けた。ぐいっと呷り、氷のみを残して全て飲み干してしまうと、先程からの難しい顔を綺麗さっぱり消した屈託の無い笑みをラゼリードに向けた。
「貴女にはそれだけでは足りないでしょう。実は私共の方でも、何やら怪しい動きをしている組織に気付いておりました。既に幾つかの組織を候補に挙げて、調査の手を伸ばしております。私が持てる全ての情報を貴女に差し上げましょう。そしてルクラァンで貴女が行う筈だった外交予定も誤魔化します。私に全て任せなさい」
「エルダナ様!」
ラゼリードが喜びに目を輝かせた。そこまで彼が──ルクラァンが──協力してくれるとは思ってもみなかったのだ。
「そのかわり」
エルダナが右手をラゼリードに突き出し、立てた人差し指をチッチッと振って見せる。そのついでに彼は片目を瞑ってみせた。
「もしも。もしもでいいのです」
エルダナは勿体付ける様に言葉を切った。ラゼリードは神妙な面持ちで続きを待った。
エルダナが薄い唇を緩め、艶やかに──男性であるにも関わらずそんな形容が当てはまる程──微笑んだ。
「もしも、貴女のお気に召して頂けたならば、私の息子ハルモニアを貴女の夫にして頂けませんか? 如何でしょうか」
エルダナの申し出に、ラゼリードが表情を凍り付かせた。視線をうろうろと彷徨わせた挙げ句に、やっとの思いで声を絞り出す。
「わたくしは結婚致しませんので……お許し下さい」
エルダナはそれでも口元に嫣然とした笑みを浮かべていた。
「今はそれで良いのです」
親書を元通りに巻き直し、エルダナに返した後。
ラゼリードは俯き、両手を胸の前で握り締めながら口を開いた。手の中には脱いだままの手袋。
伏せた睫毛が微かに震えている。まるで話したくない事を口にするかの様に。
「姫。お話の前に手袋をお着け下さい。腕が冷えてしまう」
エルダナが有無を言わさぬ調子でラゼリードの手から手袋を奪った。彼女の腕に手袋を填め、一つ一つ留め金を止めていく。夏場なので冷えるという程ではないが、自分の手では着脱困難な長手袋の為、ラゼリードは大人しくエルダナに任せた。彼は外す時程ではないが、それでも手際良く手袋を付けた。
「お気遣い、痛み入ります。……続けても宜しいでしょうか」
エルダナが頷いた。
「昨年秋、カテュリアの先代守護者フィローリが寿命で倒れ、ほんの僅かな期間床に伏せられたのち帰らぬひととなられました。その際、フィローリが自分の魔力を糧にして育てておりましたカティが……我がカテュリアの特産物、薬草カティの多くが枯れてしまったのです」
「存じております。乾燥花の在庫がある為、全体的な輸入量はいつもと変わりませんだが、生花の輸入量が激減すると……この春、セオドラ殿自ら謝罪に来られましたので」
エルダナの言葉に、顔を上げたラゼリードが色違いの瞳を潤ませた。その肩が震えている。涙が一粒、赤い左の瞳からポロリとこぼれ落ちた。それが血色をしている様に見えて、エルダナは一瞬どきりとする。
「わたくしの所為です。わたくしが引き継いだ守護の力を制御出来ておりましたら、カティは……!」
溜めていたものを吐く様な彼女の叫びは、思いのほか大きな声だったのだろう。エルダナが唇の前でシッ、と人差し指を立てた。
彼が顔をちらりと硝子扉の方へ向ける。ラゼリードもつられてそちらを見た。
主役のラゼリードも、主催のエルダナもその場には居ないのだが、夜会はまだ続いているらしい。
輪になり踊る男女や、そこここで話をする者達、忙しく立ち働く侍女達の姿、おびただしい数の蝋燭で眩く輝く大広間が、バルコニーからは切り取られた一つの絵の様に見えた。
「それで……引き継いだとは?」
エルダナが顔の向きをラゼリードの方に戻し、不審気に眉を顰める。
「それはおかしい。我々精霊は確かに、これぞと決めた人や土地を護る『守護』の魔法を持つ者もいますが、それは一代限りのもので引き継げるものではない。貴女はご自分でカテュリアの守護を誓われたのではありませんか? ですから守護になられたばかりで、まだ力が安定されていないのでは?」
心当たりがあるのか、ラゼリードがハッと息を飲んだ。だが、その表情は見る間にますます暗く沈んだ。
「確かに……。ですが確かに引き継いだとも言えるのです。フィローリはわたくしに、カティの育成方法をお教え下さり、後を任せると……。何より、わたくしの力はフィローリから」
早口で言い募るラゼリードをエルダナが手で制する。
「その辺りのお話をお伺いするのは敢えて止めておきましょう。私の立ち入るべき領域ではなさそうだ。……しかし解せない。貴女方カテュリアでの『守護』の意味合いは、我らの魔法の『守護』とはどうも違うようだ」
エルダナはふと、広間の方へと顔を向けた。硝子扉の向こうで侍女が湯気の立つゴブレットと、氷の入った茶のグラスをそれぞれ二つずつ盆に載せて立っていた。
エルダナは侍女を手招いた。硝子扉を開けて、侍女がバルコニーに歩み出てくる。甘い柑橘類の香りが漂った。
礼を述べながら飲み物を──エルダナはグラスを、ラゼリードはゴブレットを──受け取り、侍女を下がらせる。
ラゼリードがゴブレットに口を付ける。中身は柑橘の香りを付けた温茶の様だ。
ラゼリードの青ざめた顔に少し生気が戻った。
「わたくし達の言う守護とは、カテュリア王家の者を護る事、そして広大なカテュリアの土地と民を戦争や災害から護る事。しかし、戦の無い今、最も重要な役目はカティの生産です」
ラゼリードはゴブレットの中身に視線を落とした。揺れる茶の水面に映っているのは、いかにも情けない表情の彼女。自嘲気味に彼女は笑った。
「カティの苗床になっている山に魔力を分け与えて生育を補助し、猛烈な毒素を持つ為に自然受粉しか出来ないカティの受粉を風で助ける事。そして現地の住民にカティの毒花粉が広まらぬ様に護ること。それがカテュリアの『守護』の任務です。大半が植物学者でいらしたフィローリの研究成果の引き継ぎなのです」
「成程。本来は数多く生えないカティを大量生産するからくりは伝え聞いておりましたが、『守護』がその様な事柄だったとは。それで、守護交代の折りにカティが枯れた事により……?」
エルダナが先を促す。ラゼリードは再び茶に口を付け、唇を湿すと表情を引き締めた。背筋を伸ばす。
「カテュリアの守り神の逝去、守護交代、カティの激減と混乱の相次ぐ中を狙い、カテュリアの有力貴族を中心に、背信者が現れました。そ奴らは、事もあろうに数少ないカティの生花の密輸を行ったのです」
エルダナの表情が陰った。その中で、ざくろ石の様な赤い瞳だけが強い光を放って煌めいている。
それは、知性の煌めき。何もかも察したらしいエルダナが重々しく頷いた。
「ようやく話が繋がりました。密輸出の先はルクラァンですね?そして貴女はそれを追っている。有力貴族が関わっていると、今仰った。ともなれば貴族に縄を掛けられるのは王族のみ。カテュリアで事が露見した際、貴女が関わったんだ。だから貴女がルクラァンに訪れた。……そうですね? 国政代替わりの挨拶外遊はルクラァンを訪れる為の建前だ」
ラゼリードは頷いた。最早その顔に先程までの憂いは無い。ラゼリードは王族らしい毅然とした顔付きをしていた。
「はい。その通りでございます。討伐にはわたくし自ら志願しました。……今年の春に事が発覚し、首謀者は全員捕縛、尋問しました。現在処分待ちの状態です。ですが、ルクラァン側でカティを受け取った者達の事は首謀者共も知らないらしく正体不明のまま、そして密輸されたカティも行方知れずなのです」
ラゼリードは一息吐くと、今度は一気にまくし立てた。
「父の親書の内容は、こうです。『死の運び手、救いの手を伸べる女神、焼け付く吐息の主』これはカティとその毒性、薬効を差します。『存在を許されぬ紫の悪夢』は、紫色の花を咲かせるカティを用いた謀り事。
そして『蝶々』は、このわたくし」
ラゼリードは左手を胸元に置いた。
白いドレスの胸の上、雪の様に白い肌に羽根を広げる黒い蝶々。
「わたくしが父から受けた密命は、この10日間のルクラァン滞在期間中に、ルクラァン側の首謀者を突き止め、捕縛、場合によっては処刑する事。そしてカティが無事である場合はそれの奪還及び、ルクラァンへの納品です」
エルダナが驚いた表情を浮かべて片眉を上げる。彼は姿勢を崩してバルコニーの手摺りに寄りかかった。
「10日。それはまた無理な注文ですね。『どうぞ蝶々に自由を与え賜え』……それで私に片棒を担げと」
ラゼリードが弱りきった様に眉根を寄せた。指を組み、背の高いエルダナを見上げて懇願する。
「わたくしが外交の合間にこっそりと王宮から出て街を探索し、事の次第によっては市街地で武器を使用する事だけでも黙認して頂きたいのです。今の機を逃せば、わたくし自らが討伐する事は叶いません。わたくしは、フィローリが残した物を悪用された事が許せないのです。どうしてもわたくしの手で、その謀り事を潰したいのです。……守護ラゼリードの名に掛けて。どうか、お願い致します」
焦らす様にエルダナがグラスに口を付けた。ぐいっと呷り、氷のみを残して全て飲み干してしまうと、先程からの難しい顔を綺麗さっぱり消した屈託の無い笑みをラゼリードに向けた。
「貴女にはそれだけでは足りないでしょう。実は私共の方でも、何やら怪しい動きをしている組織に気付いておりました。既に幾つかの組織を候補に挙げて、調査の手を伸ばしております。私が持てる全ての情報を貴女に差し上げましょう。そしてルクラァンで貴女が行う筈だった外交予定も誤魔化します。私に全て任せなさい」
「エルダナ様!」
ラゼリードが喜びに目を輝かせた。そこまで彼が──ルクラァンが──協力してくれるとは思ってもみなかったのだ。
「そのかわり」
エルダナが右手をラゼリードに突き出し、立てた人差し指をチッチッと振って見せる。そのついでに彼は片目を瞑ってみせた。
「もしも。もしもでいいのです」
エルダナは勿体付ける様に言葉を切った。ラゼリードは神妙な面持ちで続きを待った。
エルダナが薄い唇を緩め、艶やかに──男性であるにも関わらずそんな形容が当てはまる程──微笑んだ。
「もしも、貴女のお気に召して頂けたならば、私の息子ハルモニアを貴女の夫にして頂けませんか? 如何でしょうか」
エルダナの申し出に、ラゼリードが表情を凍り付かせた。視線をうろうろと彷徨わせた挙げ句に、やっとの思いで声を絞り出す。
「わたくしは結婚致しませんので……お許し下さい」
エルダナはそれでも口元に嫣然とした笑みを浮かべていた。
「今はそれで良いのです」