センセイと一緒 ~feel.Naoki~



ひょっとしたら先に教室に入っているのかもしれない。

……けれど教室の中にも鈴菜の姿はなかった。

直樹は青ざめたまま、いつも座っている机に座った。

いつもは隣に鈴菜がいるのに……

今日は、いない。


……あんなことを言うつもりではなかった。


――――昨日。

直樹は嫉妬にかられ、衝動のまま、それを鈴菜にぶつけてしまった。

鈴菜の唇を奪い、そして……。


直樹は机に肘をつき、目元を手で覆った。

……涙で滲んでいた、鈴菜の瞳。

怯えたような目。

あんな表情をさせたくはなかった。

取り返しのつかない後悔が、痛みとともに直樹の胸に広がる。


けれど……


鈴菜が嫌がっても、鈴菜が自分をどう思ったとしても。

もう、鈴菜を手放すことなどできない。


――――もう、離せない。


理性でもなく感情でもなく、本能がそう叫んでいる。

直樹はひとつ息をつき、ぐっと手を拳に握りしめた。


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