悲哀少女



「こんにちは、狩人さん」

「やあ、ライゼ。 森に入るのかい」

「うん。 お婆ちゃんの家に」

「一人で偉いね。 陽が暮れるまでには 戻っておいで」

「わかった。それじゃあ、またね」

森の入り口に住んでいる、一人の狩人。
人喰い狼から子供や町の人々を守るため、彼は何十年もたった一人で、夜の森を見張っているのだ。

「いつも街を守ってくれてるお礼に、今度お母さんに頼んで狩人さんにもアップルパイを焼いてもらおう」

 人喰い狼は、可哀想な女の子
 暗い森の中、彼女はたった独り
 それはまるで、 咆哮する獣のように
 少女の嘆きも 夜の森に響きわたる

それはこの街に伝わる詩(うた)の詞。

「……可哀想な女の子、か。でも、悪い子なんだよね」

ぽつりと呟いて、真実を何も知らない彼は森へと足を踏み入れた。
しばらく歩き続けると、微かに甘い香りがする。

「花の良い匂い。 そうだ、お婆ちゃんに摘んでいこう」

彼女の喜ぶ顔を思い浮かべながら、彼は陽気に匂いのする方へと足を走らせた。


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