悲哀少女



「すごい……」

今まで見たことのない多くの花が咲き誇る、それはそれは綺麗な花畑に、ライゼは驚いてしばらく見惚れていた。

あ、と彼は心の内で呟く。
風と共に舞う花びらの先に、灰青の髪を靡かせる女の子が一人、目に入った。

「……お、狼?」

彼女の隣には同じく灰色の毛並みを持った、獣が一匹。

「………あなた、誰?」

向けられたその灰青の瞳に、心臓が跳ねる。

「えっと、あの、その……」

思わぬ出会いに焦る彼を、彼女は真っ直ぐと、彼を見つめた。

「ぼ、僕はライゼ」

「………男の子なの?」

その言葉に、ため息をつきながら、肩を落とす。

「君の名前は?」

「……シルビア」

「その子は……狼?」

その獣は彼女の傍に寄り添って、じっとしている。

「キラっていう名前なの。 ただの犬だよ。少し大きいだけ」

そっか、と答える。
犬だとわかっても、その大きさにまだ少し恐怖感が残っていた。

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