悲哀少女
「どこへ行くの?」
「お婆ちゃんの家。 此処から少し先へ行けばあるんだ」
「へぇ。 あなたが、あの人のお孫さんね」
「? お婆ちゃんを知ってるの?」
けれど彼女は、それには答えなかった。
「道草なんてしない方がいいよ。森は暗くなりやすいから」
それと、と彼女は続ける。
「此処から少し北の方には野犬がいっぱい居て、危ない」
「そうなんだ。 この森の事、詳しいんだね」
その些細な言葉に、女の子は切なく微笑む。
「そういえば、何処に住んでるの?」
見たことのない色をした、彼女の髪と瞳。
一度会っていれば、忘れることはないだろう。
実は自分と同じあの小さな町に住んでいて、偶然にも今まで会わなかっただけかもしれない。
そうだと、ライゼは思っていた。
「……隣の町」
「そっか」
この森は深く、隣街に行くには一日かかる。でも、彼はそんな事を知らない。
それ故に、何の疑いもなく彼女の言葉を、簡単に信じてしまった。