悲哀少女



「それじゃあね」

会話が終わってしまうと、すぐにシルビアは背を向けた。

「あ、あのさ! 明日も ここに居る?」

「………どうして?」

「母さんの作るお菓子、美味しいんだ。 だから明日、持ってくるよ」

( 町の人と 関わってはいけないよ )

「………」

「シルビア?」

「あなたは、迷信を知らないの?」

むかしむかし、一人の子どもが森の中に捨てられました。
その子は人間を怨み、そして人を襲うようになりました――。

「捨て子の迷信? 知ってるよ。 それがどうしたの?」

「…全てを知っている訳じゃないんだね」

「 どういうこと?」

「何でもない。 それじゃ、また明日」

「うん! またね」

シルビアの言葉の意味は分からなかったが、明日も会えるという嬉しさに、ライゼはその言葉の事を深く考えなかった。

灰青の髪――それは狼と同じ色。
その色故に、その捨て子は「人喰い狼」と呼ばれ、厭われた。

しかし彼は、それを知らない。


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