デュッセルドルフの針金師たち後編
第11章コペンへ凱旋

マドリから帰る

次の日マドリードへ向かう。フラメンコが
脳裏から離れない。快適列車の旅。風景は
どこものどかで日差しがとても暖かい。

オレンジが安くて美味しいのでおやつ代わりに
オレンジばかり食べていた。スペインの田園地帯、
山はほとんど見えずなだらかな丘ばかり。

ドンキホーテがいつ現れてもおかしくはない、
昔からの風景なのだろう。マドリードで
安アパートを借りた。毎日バザールとユースと

夕食のお買い物だ。蚤の市で大量に火縄ライター
を買う。珍しいし風が強い時に効果的だしかも
すごく安い。バザールはほんとに飽きないものだ。

広場で闘牛の練習をしていた。一人が木作りの
牛の頭を両手で頭上に掲げて突っ込んでいく。
日本人の闘牛士もいるらしい。こうやって

毎日練習をしているのだろう。さて、一人ぼっち
というのはよく聞くし、感じるときも多いが。
2人ぼっちというのが実際にあるんだと実感した。

マドリで数週間、仲間もなく二人だけで暮らした。
マメタンは語学の勉強。オサムは小説にチャレンジ
というずいぶん前からの夢の休日ではあったが。

とても寂しさがつのった。2人愛し合っても、どう
しても胸にぽっかりと空洞が存在している。かなり
それも拡大してるみたいだ。ふたりぼっち。彼女も

思いは同じだったろう。誰一人知り合いのいない
マドリード。ユースでも街中でもなかなか仲間が
見つからない。あれほど人の出入りが多かった

コペン。デュッセルでの針金仲間たち。皆どうして
いるだろう?仲間がたくさんいてこそマメタンは輝く。

「早めに切り上げてコペンに1度戻ろうか?デュッセル
で車を買ってコペンの皆に会いに行こう」

マドリ発の国際列車に乗る。陽気なスペインの人たちが
夜通し大声で歌を歌って我々を励ましてくれた。

だが今ひとつ、心の底から笑えない。将来の見通しが
立たないというのも大きな原因だったと思う。

サンセバスティアンで途中下車。有名な海岸線を二人で歩く。
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