デュッセルドルフの針金師たち後編
ドイツは今選挙戦の真っ最中だ。キリスト教民主同盟
(CDU)と社会民主党(SPD)との二大政党に近い。
アメリカ並みに派手なコマーシャル選挙だ。

いたるところにCDUとSPDの大ポスターが貼ってある。
CDUの政治集会にユースのドイツ人と一緒に行ってみた。
バラエティあり歌あり踊りあり。アメリカの大統領選の

ミニミニ版だ。最後にフランクフルト名物アプフェルザフト
(りんご酒)が振舞われた。エレキバンドが登場してきて
ディスコに早代わり。若者狙いの大演出なのだろうが、

日本ではこれは選挙違反だろうな。政策論争皆無の
ドンちゃん騒ぎになった。バンドのボーカルが帰りがけに
ヤパーナー!と呼びかけてきて、楽屋まで来いという。

日本同様狭く汚い楽屋部屋でしつこくマメタンばかり気に
している。

「僕たちとこれから朝まで付き合わないか?」
と口はこっちへ向けて目はじろじろとマメタンを見ている。
オサムは頭にきてべらんめー調のドイツ語で叫んだ。

「ナインダンケ。ヴィアハーベンカイネツァイト。チュース」
(悪いな若えの。俺たちにはそんな時間はないんでね。あばよ)
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