デュッセルドルフの針金師たち後編

ローレライ

いったんデユッセルへ戻る。ユース前のラインの川床が
いつになくあわただしい。移動遊園地メッセが来るという。
一晩でそれはそれは電飾鮮やかな遊園地ができていた。

お化け屋敷、メリーゴーラウンド、引き当てゲーム。
どこの国でも同じだな。昔はジプシーが色んな外道芸
や見世物小屋を繰り広げていたのかなと思う。

中にひときわ鮮やかな回転コースター”シンカンセン”という
のがあった。なんと日本の新幹線の超ミニ車両がぐるぐる回る
だけの、時々上がったり下がったりするだけのものなのに、

すごい人だかりだった。なんだか早く日本に帰りたくなる。この
晩は童心に返ってマメタンと遅くまで遊びまわった。次の日、
コブレンツからマインツへ向けてラインを北上する。

沈みかけそうな運搬船が行き来する。なかなか橋がない。左右の
崖がだんだんとそそり立つようになってきて、両岸を道路が走り
民家が点在する。コンバットの戦争映画で見たあの景色だ。

ローレライはあそこらしいと崖の上を指差しつついつに間にか、
通り過ぎていた。川幅は狭くなり確かに難所だ。そのうちラインの
流れが落着いてきてマインツに近づいた。この付近にはアメリカ軍

の基地があって、ギーセン、ハーナウ、ビースバーデン等いい町が
たくさんある。特にハーナウの陸橋は穴場だった。アメリカンが多い。
すらりと背の高い黒人の女性がパッとじゃらじゃらを手にとって、

すぐに首につけた。すごく似合っている。
「べりナイス!モーストビューチフル!」
「サンキュー!」
といって彼女は胸を張って消えていった。

さらに我々は駆け巡る。ハイデルベルクから南へ。マンハイム、
カールスルーエ。シュバルツバルトへ上る。スイス国境沿いの温泉
の町、バーデンバーデン、フライブルク等等、くまなく回る。
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