デュッセルドルフの針金師たち後編
「ハルト!」(止まれ!)

またハルトや!ガチャと自動小銃の安全装置がはずされる。
またかいな、二人は下ろされてパスポートを取り上げられ、
両手を車のサイドに当てて後ろ向き。自動小銃を向けられた

ままもう一人が身体検査、さらにもう一人が車の中を調べる。
『なむさん、武器なんてあらへん。何とか見逃してくれ』
数分だったろうがすごく長く感じた。脂汗が出てきた、まだか。

やっとOKがでて、あのバイクについて行けと指示された。
パスポートは取り上げられたままだ。とにかく運転席に乗り込む。
BMWの750CCポリスバイク。革ジャンポリスの後を追う。

ところがすぐに見失ってしまった。なんてこった、パスポート
ないのに。その瞬間パッとバイクが現れた。そしてまたあの
警察署に着いた。3度目だ。もう絶対に来ませんからと、

ほんとに来なけりゃよかった。署長は怖い顔をしてこういった。

「今アラブゲリラがイスラエル人を射殺して、ミュンヘンは
非常事態であるからして、誠に危険が一杯である。すみやかに
ミュンヘンを立ち去るべし」

ということで、
「フェアシュテーン?」(わかったか?)

「ヤー、ガンツフェアシュテーン!ダンケシェーン。
アウフビーダーシャウエン!」

と南ドイツ方言で言ったら。署長は大いに喜んで、

「グーテライゼ!」(よい旅を!)

と言った。
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