デュッセルドルフの針金師たち後編
「やられちゃった」
カバンを持っていないところを見ると没収か?
手に紙切れを持っている。

「たいへんだったな」
オサムが紙切れを受け取りながら言うと、マメタンは

「ううん、そうでもなかった。結構楽しかったよ。
身振り手振りで」
と強がりを言った。

紙切れをよく見ると、どうも3ヶ月以内に国外退去。
以後6ヶ月以内は入国拒否とのことらしい。同じ文章が
パスポートにもでんとスタンプしてあった。

商品は没収だ。ミュンヘンゲリラの後だから警察も
相当ぴりぴりとしていたんだろうな。オサムだけでも
つかまらなくてよかった。クリスマスは十分間に合う。

あと2ヶ月だ。そろそろ求人広告を出さなくちゃ。
決戦直前の2人には、こんなことくらいではちょっとも
へこたれない。クリスマス開けに大金を持ってドイツを

抜け出して、どこかの国でパスポートを再発行してもら
おう。ということでフランクフルトへ戻り、大募集の
原稿を考えながらさらにデュッセルドルフへと向かった。
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