デュッセルドルフの針金師たち後編

ほっと一息

12月9日の夕方早めに切り上げてアウグスブルクから
アウトバーンに入る。入り口ランプの緩やかなカーブで
日本人らしき若者がヒッチハイクをやっている。

懐かしき今では少ないカーキ色の登山用リュックだ。
背中に『世界広布』と書いてある。

「どこいくの?」
「あ、日本人の方ですか?デュッセルドルフです」
「OK。俺たちもデュッセルや」

ヒッチの会話はいつも決まっている。結局、独協大学の1年生で
着いたばかり、デュッセルドルフに会館があるのでそこに行くという。

「会館て何の会館なの?」
「S教団の会館です。昨日はフランクフルトの会館を訪ねました」

とても元気だ。質問をするととてもうれしそうにはきはきと答える。

「背中に世界広布と書いてあるけどどういう意味?」

と聞くと待ってましたとばかりしゃべりだした。長距離ドライブは
ヒッチハイカーがいろいろとおしゃべりしてあげるのが礼儀だ。
眠気覚ましにちょうど良いのだ。

「ふーん。法華経を世界に広めようって訳?」
「はい、そのとうりです」
「その会館に行けば、日本の本いっぱいある?」
「ええ、いっぱいあります。ぜひおこしください。ユースの近くです」
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