デュッセルドルフの針金師たち後編
「すごいですね!これで西ドイツ全都市をめぐられたんですね。
すばらしいご主人さんです」

それほどでもないわよ、と口には出さずマメタンは、
背のすらりと高くハンサムな若き弁護士の卵とラインの
夕暮れ河畔をふたりしずかに歩むのであった。

そして翌日、カルマンギアが到着して一人のきざな
革ジャン男と、3人のちんどん屋が登場した。デュッセル手前で
皆着替えなおして、それからおもむろに到着したのだ。

「あの真ん中の松田優作風なのが彼氏」
「なるほど・・・?」

弁護士はつぶやいた。3人とも歩きにくそう。

「ただいま、マメタン」
オサムは自信たっぷりに声をかけた。

「だれ?こちら?」
「ああ、こちら弁護士さん。今回お骨折りいただいて、
すごくスムーズに再発行パスポート取れたわよ。これがそれ、ハイ」

「どれどれ。おーっ、かっこいい。真っ白じゃん!」
「どうも」
弁護士君が会釈する。オサムはおもむろにサングラスをはずして
胸に手をやり彼に頭を下げた。

「サンキュー、弁護士君」
その顔にはロンドンの名残りのキスマークがばれないように、
ちらりとマメタンのほうに流し目をして、ニッと笑った。

『どうだ似合ってるか?この3ぞろいのスーツ。
結婚式はこれでいく』

ベストドレッサーのオサム君だった。
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