デュッセルドルフの針金師たち後編
007のテーマが山一杯に響き渡る。
もちろんインストラクター付だ。
昼前スタート、2時間かけてロープウェイ

を乗り継ぎ乗り継ぎフィルストの頂上に立つ。
すばらしい眺めだ。まさにスイスアルプスの
ど真ん中。欧州大陸を見下ろす感じだ。

インストラクターの合図で下りスタート。
ひたすらシュテムボーゲンでのろのろと5人
連なって下りる。ヒュイヒュイと多くの人たち

が次から次へと滑り降りて来る。やっとなだらかな
下りにきた。数キロメートル一直線だ。
「ここからは好きに滑って下で待ってなさい」

やっほー!。みな好き好きに滑り出した。
再び007のテーマが山一杯に鳴り響く。
ところがオサムはバランスを崩してしまった。

直滑降だから最悪だ。バランスは戻らない。
中腰でどんどんスピードが乗ってくる。
倒れようにも倒れきれない。もう駄目だ。

ものすごい雪煙を上げて、左斜めにおおきく
スライドしてやっと止まった。冬のアルプスは
冷や汗一杯、死ぬほど暑い雪だった。
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