怪談短編集
僕は次の駅で降りた。
東京にはホームレスが多いみたいで、駅のプラットホームにもそれはいた。青いビニールシートにデベンと寝そべったおじさんは、眠れないのか目を開けている。
と、彼の前を丸っこいおばさんが足早に通り過ぎた。
「…豚」
不意に彼が言った。
え?
豚?それはあんまりじゃないか。
まあ、ああいう生活になると、ストレスが溜まって悪口が口を吐くのかもしれない。
次に通り過ぎたのは、さっきのサラリーマンだった。彼は、携帯で誰かと喋っているみたいだ。