怪談短編集


 バラーの、声が近くから聞こえた。

「いるぜ」

「なー、アレックス。この音なんだよー?」

 この、音?

 バラーの、端整な顔が歪んでいるのがわかる。この声から、想像すれば、だけど。

「何だよ、音なんて…」

 キィィィ。ギィィィ。

 何だ!?

 軋んだ音。

 前にテレビでもこんな音あったな。

 錆びた幽霊船の、進む音!!

 でも、あくまでもあれは映画。

 これは、現実。



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