怪談短編集

3.人間消失


 翌々日、僕はまた塾に向かう。受験生はつらい、その意味が初めて理解できた。

 駅のプラットホームには、例のホームレスがいる。彼の前を、ふっくら太ったおっさんが通る。あれが、中年太りってやつか。

「…野菜」

 へ?僕は驚いた。普通、あれは豚だろ?野菜じゃない気がする。

 あ、そっか。

 あのホームレスには通った人の前世や後世が見えるんだ。きっとそうに違いない。

 僕は自分の考えに納得しながら歩いた。



 帰り道、何故かあのホームレスはいなくなっていた。残念だなあ。

「次のニュースです」

 ビルについたテレビではニュースが放送されていた。若いアナウンサーが原稿用紙を読み上げる。


< 12 / 195 >

この作品をシェア

pagetop