怪談短編集
3.人間消失
翌々日、僕はまた塾に向かう。受験生はつらい、その意味が初めて理解できた。
駅のプラットホームには、例のホームレスがいる。彼の前を、ふっくら太ったおっさんが通る。あれが、中年太りってやつか。
「…野菜」
へ?僕は驚いた。普通、あれは豚だろ?野菜じゃない気がする。
あ、そっか。
あのホームレスには通った人の前世や後世が見えるんだ。きっとそうに違いない。
僕は自分の考えに納得しながら歩いた。
帰り道、何故かあのホームレスはいなくなっていた。残念だなあ。
「次のニュースです」
ビルについたテレビではニュースが放送されていた。若いアナウンサーが原稿用紙を読み上げる。