怪談短編集
今度こそ、俺はロープをよじ登った。
一見、海賊船みたいな船だが、朽ち果てていて、元の姿は想像がつかない。
「わっ!!」
手すりにつかまって、俺は悲鳴を上げた。
すごいベタベタする。
ベタベタ?口では表現しにくいんだけど、ヌルッとして滑りやすい。うなぎの体表みたいな感じ。
バラーが駆け寄ってきた。
「見回り、してきたんだけどよ。誰もいねぇんだ」
「誰も?」
「そ。自動操縦になってるからこの船、動いてんだけどさ。妙なんだ」
「妙?」
「普通、船員が死んだなら、何等かの痕跡くらいは残るはずなんだ。なのに、ここには死体の一つも転がっちゃいねぇんだ」
何!?
そんなこと、ありえねぇ。