怪談短編集


 そのとき、気のせいかもしれないけど、何かが靄の向こうを通った。

 大きな、何か。

「連絡、取れたぞ」

 バラーの方を向いて、もう一度、さっきの影を探したけど、もうどこにもいなかった。

 なんだったんだろ?


「どうしたんだよ?」

「いや、なんでもねぇ」


 俺たちは、救助を待った。

 ひたすら待った。


 二時間も、待ったような気がした。本当はニ十分だったけど。

 ちょうど、近くに出ていた白いボートのおじさん五人が助けに来てくれた。


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