怪談短編集


 向こうで、悲鳴が上がった。

 俺たちは慌てて駆け寄って、絶句した。

 ヌルッとして長い触手。

 それは、カヌーで潜ったときに見た、あの細くて長い、アレだった。

 クラゲみたいな丸くて、大きな頭が海から覗いている。

 そいつの、長い触手が、四人の船員を絡め取っていた。


 今、やっとわかった。なんで、あの船がヌルヌルで、誰もいなかったのか。

 コイツに、襲われたからなんだ。

 怪物は、絡め取った船員を食べた。

 新たに触手が伸びてくる。

「うわっ!!」


 バラーが、捕まった。

 怪物の重さに耐えきれず、船が傾く。

 

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