怪談短編集


「こりゃ、酷くやられたもんだな」

 父は、箒と塵取りを物置から取り出して、台所の掃除を始めた。

「私、ネズミがいなくなるまでは家事を一切しないから」


 母が、宣言した。

 何故、料理だけではないのか。

 それは、洗濯機が台所の奥にあるからだ。

「じゃあ、私、父さんを手伝うよ」

 メロディは、母ほどネズミ嫌いではない。

 クールは、台所の床に鼻を押し当て、しきりに動き回っている。

「クール、ネズミ捕りは任せたよ」

 それを理解したのか、彼女はこちらに向かって鳴いた。


「とりあえず、業者に連絡をするか」

 父が、携帯電話を取り出した。


 




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