怪談短編集


 翌朝、起きると、あの捕獲器にネズミが挟まっていた。


 クールも、また一匹のネズミを仕留めたらしく、リビングまで死体を運んできた。


「クール、お利口さんだね」


 捕獲器の死体は、父が外し、また捕獲器を設置する。


「今日は五匹…。けっこう、捕獲したんじゃない?先週分も合わせて、だけど」

「だな」


 父は、不意に

「メロディ、地下室からお米、取って来てくれる?」

「え、私?」

「俺は今から、おかず作るから。な、頼むよ」


 宣言をしてから、怠けっぱなしの母は、まだ寝ている。

 メロディが行くしかないだろう。

「わかった」


 地下室に通じるドアを開け、階段を下りる。懐中電灯を探していると、そこら中で物音がした。

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