怪談短編集
「どうした?」
地下室から、飛び出したメロディは、父に声を掛けられた。
「ネ、ネズミ!たくさんのネズミがいたの!」
父は、血相を変えて、地下室へ入っていく。
「メロディ?どこにいたんだ、ネズミは」
父が、階段の途中から声を掛けてきた。
「棚!」
言いながら、地下室に行く。
「いないぞ」
地下室に入って、絶句。
だって、そこにはネズミの姿が—否、ネズミがいたという痕跡さえもなかった。
「たしかに、いたんだよ?」
「気のせいだろ。帰って来てから、ネズミのことを考えていたから、そういう幻覚でも見たんだろ」
父は米の袋を片手に、階段を登り始めた。