怪談短編集
「あれ、おかしいな。車の鍵がないぞ」
父が、ポケットの探る。
「鍵なら、ベッドの上で見かけたよ」
メロディは、さっき、見かけたことを思い出して、父に教えた。
「ありがと、すぐに戻るから、そこで待っててくれ」
彼は、階段を上って行った。
少しして。
「うわっ」
父の声が聞こえた。
「お父さん?」
不安が押し寄せる。
階段を一段飛ばしで駆け上り、両親の寝室に入る。
屋根が、落ちてきていた。
無数のネズミの死体と生存者。
ネズミたちは、メロディの姿に気付き、こちらへと走ってくる—。
そのとき、瓦礫と化した屋根の下から伸びている手に気付いた。
ちょっぴり高級な腕時計。
さっき、父が来ていたグレーのTシャツ。
間違いない、アレは—
父。