怪談短編集



 それから、母がふとダレンに目を向けた。


「マルクス、その犬を家に入れないでちょうだい!!」



 え?



 僕は、ダレンを見た。


「母さん、何言ってるの。この子はダレンだよ。ずっと家に入れてたじゃないか」



 すると、今度は父が口を開いた。


「忘れたのか、マルクス。母さんは犬が大っ嫌いだったろ?早く、その犬をガレージにでもつないで来なさい」



 そんなの、嘘っぱちだ。でも、僕は、開きかけた口を閉ざす。


 今の二人はオウムに操られているんだ。言ってることは全て、オウムの書いたシナリオ。


「嫌だ」



 僕は、言った。


「マルクス!!」


「ダレンは、僕の大切なペットだ!外になんか出すものか!!」


< 156 / 195 >

この作品をシェア

pagetop