怪談短編集
奥のカウンターに腰掛けた老人が、僕の方をジロッと睨んできた。
「何の用だ?」
「あの、この本を取りに来たんですけど」
「あぁ、ジェームズさんの…で、君は?」
「ジェームズは僕の祖父です」
老人は、ペッと唾を吐き、僕の持つ注文書を引っ手繰った。
「この本は、先月、届いてるよ」
「いくらですか?」
「何で君が買うんだい?君には関係ないだろう?」
「関係あります!」
僕は大声で叫んだ。
老人が、眼を丸くした。
「その、悪魔が僕んちにいます!!!」
彼は、カウンターの奥の棚から、本を一冊抜いた。
「20$だ。一つ、警告しよう。悪魔祓いをするときは絶対に近くに動物を寄せ付けるな。逃げ出した悪魔が、他の近くにいる動物に乗り移るから」