怪談短編集

 あのときの、サラリーマンのおじさんだ。僕は会釈して、確信した。

「…人」

 思わず、見えたものを言葉にする。

 この人は、また人を食べたんだ…。

「え、何だって?」

 彼が顔をしかめる。あ、ヤバい。聞こえちゃったかな?

「君、変なことを言うね。僕はどう見たって人だろ?それとも、何だい?君には僕が宇宙人か猿にでも見えるのかな?」

 違う!

「あなたは、人を食べましたね?」

 口が滑って、思わずそう言っていた。あ、しまった!

 おじさんがニィ、と笑った。
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