怪談短編集
すると、母さんが、
「東京に引っ越したって、こっちの塾に通えなくもないわよ」
にこやかに言う。
そういう問題じゃないんだけど。むしろ、この塾は最悪。
けど、母さんにそんなこと言える筈もなく、僕は小さく頷いた。
「ところで、父さん。何で引っ越すことになったの?」
僕は恐る恐る聞いた。
「異動になったんだ」
僕は、父さんの上司を恨んだ。僕が、大切な時期に限って…。
親友には会えなくなるけど、会いにこればいいかな。
僕は一人で頷いた。もう二度と、会えなくなるわけじゃないんだから。そう言い聞かせながら。