怪談短編集
「じゃあ、売れないミュージシャンか」
トゥークは音楽にはかなり詳しい。だから、トゥークが知らないアーティストは相当珍しいのだ。
「ま、いっか。次行くぞ」
次の展示室も、まだ芸能人の人形だった。
「あ、へちゃむくれのジェイだわ!!」
リリーがキンキン声で喚いた。
「へっ!全然似てないや!」
ケイシィはそう言って、人形に蹴りを入れるフリをする。他の観覧者がいなくて助かった。
トゥークは見た。ケイシィをもの凄い形相で睨む人形を。
その目は、さっき見たのと同じだった。
この目は、人形じゃない…!!
これは、人間の目だ!!