怪談短編集
今年は出張先で買ってくるつもりらしい。出かける前に父は銀行に寄ると言っていた。
「どうしたの、梨子。元気ないわね」
母が不思議そうに。誕生日に溜息ばかり吐く子供は滅多にいないだろう。
「だって、誕生日なのに、私、欲しい物買ってもらえないから」
母は、少し面食らったような顔になる。
「そうね、でも今年は梨子が気に入りそうな物よ。内緒だけれど、人形だって」
「私、もう中三だよ?人形で遊ぶほどガキじゃない」
母は大きく頷き、おもむろに
「笑っちゃ駄目よ。実は父さんね、あなたのこと小さな娘って思ってるみたいよ」
笑いながら言った。
「あなた、彼氏いるでしょ?多分、それを知ったら激怒するんじゃない?嫁にはやらん、って」