怪談短編集
梨子は、人形の目を見て、理由がわかった。
その目はどこかリアルなのだ。まるで、生きた人間みたいに。
怖い。
怖いよ。
もう一度、覗き込む。
あれ?梨子は首を傾げた。確かに人間の目だった。
なのに、今度はどんぐりみたいに丸い、黒目勝ちの目だった。
気のせい、なのだろうか。
「どうだ、かわいいだろ?」
父が言う。
要らないなんて、言えない。
「うん、かわいい」
梨子は無理矢理人形を抱きしめて言った。