怪談短編集

2.囁き


 父は何度も頷く。

「そんなに気に入ったんなら、ベッドに置いとけば?あのぬいぐるみをどけて」

 兄が言う。

「えー」
「いいんじゃないか?」

 父の前で、嫌なんて言えない。

「そーする」

 梨子は答えた。

 兄が、ニシシと笑った。


 その日、兄に監視されながら、梨子は人形をベッドに置いた。本当は置いときたくなかった。今すぐにでも、クローゼットに入れたかった。

「あっち行ってよ」

 兄は知らんぷりだ。

「俺は寝たいんだ。早くその作業、終わらせろよ」

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