怪談短編集

 気がつくと、大きな階段の前にいた。

 何だろう。灰色の階段。上ったらいけない気がして、後ずさる。…足が、動かない。

「え?」

 足元を見る。

 右足を、あの日本人形が掴んでいた!

「きゃあっ!」

 人形は、恐ろしいくらい強い力で、梨子の足を上げる。

「やめてよ!」

 動かしたくないのに、かってに左足も上がる。

「一段目…」

 人形が囁いた。まるで、雷みたいに低い、唸るような声。

「きゃあああああっ!」

 梨子は絶叫した。


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