怪談短編集



「梨子、起きて。起きなさい」

 父の声で、梨子は起きた。

「夕食だ」

 かなり長いことねていたらしい。時計を見ると、八時だった。

 久々に、あの夢を見なかったおかげで、ぐっすり眠れた。

「お前は、明日からまた夏休みだが、俺は仕事なんだ。頼むから急いでくれよ」

 父が珍しく取り乱した口調で。

「うん」

 梨子は、いつの間にかベッドで寝ていた。ベッドに入った記憶はないのに。

「梨子!」

 母の声だ。梨子は父の隣を駆け抜けて、一階に下りた。



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