覚醒彼女~君と生きたい~
ちがう…。
ちがう、ちがう、ちがう…。
誰でもないんだ。
誰かが悪いわけじゃないんだ。
ノアも僕もみんな…。
僕達は、失わなければ…、痛みを知らなければ…、生を感じられないんだ…。
だから…。
僕は、LUCASの文字をなぞる。
僕が生まれた証、存在の証…。
生まれたての僕は初めて痛みを知り、力いっぱい泣いたんだ。
痛いよ。血が流れてるよ。辛いよ。って。
そうして、僕は痛みを知ったんだ。
痛みを知らずに生きられたなら…、それは、どんなに幸せなことか。
いや、不幸かもしれない。
僕は…。
僕にできることは…。
痛みを知ることだけだ。
そう思って、僕はノアを強く抱きしめて耳元で囁いた。
「東の土地へ行こう」