プリンセスの特別な事情
「分からない」
辛そうな表情のお母さんの顔は今でも忘れられない。
「・・・真紘、そちらは?」
そう聞いたお父さんの問いに莉子自身が答えた。
「私、美谷莉子と申します。美尋さんと同じ英文科で仲良くさせていただいています」
そう言って頭を下げた。
「そうか、いつもありがとう」
父が頭を下げたと同時に手術室の扉が開いた。
「手術は、成功です。しかし、いつ容体が急変してもおかしくありません」
私はそう言った先生をぼんやりと見つめていた。
もし、お姉ちゃんが死んだら?私は何をして生きていくの?