好きって言えよ[恋愛短編集]




私は人気のない階段に隆司を連れて来た。




デリケートな話をする時は、
それ相応の場所でなくてはいけない。




「隆司、何かあったでしょ??」




隆司はその言葉に最初はポカンとした顔をして、
その後自嘲気味な乾いた声で笑った。




「まあね。


でも、大した問題じゃないから。」




そう言って私から視線を逸らす。




「…嘘。


騙そうったって、私は騙せないよ??」




大した問題じゃないなら、こんな風にはならないだろう。




そう思った私は隆司の本心を探る様に真っ直ぐ見つめた。




短い沈黙の後、

隆司は諦めた様に息を吐き出し、

私と視線を合わせた。




「…フラれちゃったんだよ。


好きな子に。」




.
< 16 / 36 >

この作品をシェア

pagetop