好きって言えよ[恋愛短編集]
私は人気のない階段に隆司を連れて来た。
デリケートな話をする時は、
それ相応の場所でなくてはいけない。
「隆司、何かあったでしょ??」
隆司はその言葉に最初はポカンとした顔をして、
その後自嘲気味な乾いた声で笑った。
「まあね。
でも、大した問題じゃないから。」
そう言って私から視線を逸らす。
「…嘘。
騙そうったって、私は騙せないよ??」
大した問題じゃないなら、こんな風にはならないだろう。
そう思った私は隆司の本心を探る様に真っ直ぐ見つめた。
短い沈黙の後、
隆司は諦めた様に息を吐き出し、
私と視線を合わせた。
「…フラれちゃったんだよ。
好きな子に。」
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