好きって言えよ[恋愛短編集]
先生は何も言わずに依然として私の顔を見つめている。
「あ、相葉先生が、先生のこと好きだって。
生徒たちの間で話題になってて…。」
私の頭の中で悪魔がこんなチャンスは二度と来ないと囁く。
「それで、私…。」
この先を言うのを躊躇い、口を引き結び、吐き出す。
「先生のことが…」
その時、背後でガラリとドアが開く音がした。
反射的に振り返ると、そこには笑顔の相葉先生が立っていて。
「一弥くん!!
暇だから今お昼買ってきたんだけど…」
私と目があった相葉先生はしまったという顔で口を閉じた。
一弥くん。
一弥は鹿山先生の下の名前だ。
さっき、相葉先生は鹿山先生って呼んでいたのに…??
「相葉先生。」
怒った声の鹿山先生。
その時に全部悟るなんて、なんて私は馬鹿なんだろう??
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