好きって言えよ[恋愛短編集]
「失礼、しました。」
私は教科書を胸に抱いて、相葉先生の横を通り抜けて職員室を出た。
早く職員室から遠ざかりたかった。
誰もいない時には下の名前で呼んでいる。
それだけで二人の関係の説明は充分で。
私は学校の端に当たる視聴覚室につくとドアにもたれた。
足に力が入らなくて、ずるずると背中が滑って私はそのままその場でうずくまった。
ポロポロと涙が出る。
好きという言葉さえも言えなかった。
私と先生が釣り合わないことは充分に分かっていたつもりなのに。
思ったよりも失恋の痛みは深くて。
「涙と一緒に好きの気持ちも流れてしまえばいいのに…。」
それでも私は貴方を思い続けるのでしょう。
貴方が好きでごめんなさい。
[好きでごめんなさい。END]