好きって言えよ[恋愛短編集]




グサリと何かが突き刺さったみたいに胸が痛んだ。




本心なんて言えたもんじゃない。




なのに、一年を通して心に溜まったその気持ちは
口から出よう出ようともがいていて。




「居るよ。」




なんて言うつもりなかったのに、
気づいた時には吐き出していた。




「そっか…。そいつ、誰??


俺が知ってる奴??」




私が黙っていると、足音が近づいてきて…


隣で止んだ。




「なんで、泣いてんだよ。」




困ったような声。




ふいに伸びてきた手の平が、
私の頬の上に零れた雫を掬う。




私がおもむろに洋平に視線を移した時、
突然 唇に熱い何かが押し付けられた。




それが洋平の唇だと気づいた時には、
もうそこにはなくて、私の視線の先の洋平の困った顔の上で、
穏やかに微笑んでいた。




「…行くなって、言えよ。」




洋平の瞳はどこか憂いを帯びていて、私の胸を熱くさせる。




「お前が行くなって言うなら俺は行かない。


…俺が好きなんだろ??


好きって、言えよ。」




.
< 4 / 36 >

この作品をシェア

pagetop