好きって言えよ[恋愛短編集]
グサリと何かが突き刺さったみたいに胸が痛んだ。
本心なんて言えたもんじゃない。
なのに、一年を通して心に溜まったその気持ちは
口から出よう出ようともがいていて。
「居るよ。」
なんて言うつもりなかったのに、
気づいた時には吐き出していた。
「そっか…。そいつ、誰??
俺が知ってる奴??」
私が黙っていると、足音が近づいてきて…
隣で止んだ。
「なんで、泣いてんだよ。」
困ったような声。
ふいに伸びてきた手の平が、
私の頬の上に零れた雫を掬う。
私がおもむろに洋平に視線を移した時、
突然 唇に熱い何かが押し付けられた。
それが洋平の唇だと気づいた時には、
もうそこにはなくて、私の視線の先の洋平の困った顔の上で、
穏やかに微笑んでいた。
「…行くなって、言えよ。」
洋平の瞳はどこか憂いを帯びていて、私の胸を熱くさせる。
「お前が行くなって言うなら俺は行かない。
…俺が好きなんだろ??
好きって、言えよ。」
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