恋バス【短編】
バスのアナウンスを遠くの方で聞いているような…、そんな感覚。
「なんで…そう思うの…?」
震える声で、ゆっくりと問う。
もしこれで私が頷いて、彼が“ごめん”なんて言葉を発したら…私はおそらく立ち直れない。
振られるのが怖いから、本当のことが言えないでいる。
「何でって…――聞こえたから」
「聞こえたって――…」
「――“好きです”って」
私の言葉を遮って奏君がそう答える。
何もかもを見透かしている。
そんな瞳と共に。
“好きです”
それは毎回私が奏君の背中に向かって呟いていた言葉。