恋バス【短編】
何で…、私の前の席に移動してるの…?
さっきまでその席は空席だったのに…。
いつの間に…。
「――聞いてる?」
「ぇ…あ、ごめん」
「しっかりしてそうで意外にしっかりしてないんだね」
クスッと笑う彼…“奏君”の笑顔は、ずっと鳴り止まなかった私の心臓を一瞬にして止めてみせた。
“しっかりしてない”と、少なからずけなされていることも気に止めず。
「で?」
「ぇ…?」
「いつもどこで降りてるの?」
小首を傾げてジーッと私の瞳を見つめてくる。
「えっと…」
普段ならすぐに答えられるのに、今は奏君に見つめられてなかなか頭が働かない。
私…いつもどこで降りてたっけ…?